新たなクラウド・サービスの需要―政府機関によるIT統合への取り組みから
米国州政府および地方自治体に対する取り組みを続ける中、Microsoftがニューヨーク市およびカリフォルニア州とのクラウド・コンピューティング契約を獲得した。
Microsoftの米国州および地方政府担当副社長のゲイル・トーマス・フリン(Gail Thomas-Flynn)氏は自身のブログにて、
カリフォルニア州には、Microsoftの「Business Productivity Online Suite(BPOS)」を介して、同州の20万人におよぶ職員が使用する電子メール・サービスを提供する。カリフォルニア州は単独の機関がIT業務を一手に引き受ける体制を整えつつあり、クラウド・コンピューティングをコスト削減に利用するよい方法を模索していた。
と記している。
こうした統合への取り組みを率いるのは、インテグレーターの
Computer Science Corp.(CSC)。これまでの環境では、3つの異なるプラットフォーム上で130種に及ぶ電子メール・システムが運用されていたが、これらを利用してきた職員が、Microsoftのサービスもしくは州営のホステッド・サービスを利用するように移行させる取り組みが行われている。
「現在では同州組織の80%の職員が電子メール・サービスとして『Microsoft Exchange』を利用している」
とトーマス・フリン氏。
Microsoftの独壇場か―ライセンス契約に対しGoogleの抗議も
今回の契約内容をよく知る州政府関係者によれば、本契約は納期未定/数量不確定(Indefinite Delivery/Indefinite Quantity:IDQ)という契約形態を採っているという。
CSCに支払われる金額は5,000万ドル強に相当するが、同サービスを選択する個別組織の数によって額は多少変動するだろうという。
カリフォルニア州は2009年にも電子メールの統合契約を検討したが、その際にはGoogleが「同州は Microsoftに有利なように条件を不正操作している」と抗議したことをLos Angeles Times紙が報道している。
ライセンス契約の一本化によるコスト削減とライセンス独占化の不安
カリフォルニア州との契約の一方、ニューヨーク市とは、これまで個別契約が結ばれていた数十件のライセンス契約の一本化を決めた。さらに同契約には、10万人に上る同市職員がMicrosoftのクラウド・サービスを利用する条項も盛り込まれている。
この契約により、ニューヨーク市は今後5年間で5,000万ドルのコスト削減が期待できるという。現在ニューヨーク市は新たなIT購買体制を導入しており、今回のライセンス統合はその一貫となっている。
これまではニューヨーク市の各機関がソフトウェアを自主的に調達していたため、結果的に同市は40以上の異なるライセンスを保有する事態に陥った。しかしこれを改善すべく、カリフォルニア州と同様にDoITTが各機関のIT業務を中央でコントロールしているデータセンターに任せる取り組みが進められる。
内容の詳細はまだ確定していないが、市職員に新技術を日常的に利用する機会を与えるものとして、ブルームバーグ市長はこのたびの契約を高く評価している。同市の職員はMicrosoft のホステッド・コラボレーション/電子メール・サービスを使えるようになる予定だ。
クラウドへのアクセスは段階的に拡大させていき、当初は3万人がこれを使用することになる。残りの職員にも漸次アクセス権が付与されるという。
こういった取り組みにより、州および市のコスト削減が進む一方で、契約一本化などMicrosoftによる独占的な状態が進むと予想される。
前述にもあるようにGoogleが電子メールの統合契約に対し抗議を行ったように、ライセンス契約を打ち切られた他社に対する措置を州や市がどのように行うのかも注目すべき点である。
Microsoft
http://www.microsoft.com/Gail Thomas-Flynn氏のブログ
http://blogs.msdn.com/b/bright_side_of_government/Computer Science Corp.(CSC)
http://www.csc.com/